2つの脚本ができました
忠犬タマ公の【しゃべる紙芝居】、2つの脚本が完成しました!
「タマ公目線の脚本」と「飼主吉太郎目線の脚本」です。プロジェクト詳細で脚本の一部をご紹介してますが、それは「タマ公目線の脚本」の一部です。今回新たにできた脚本は「飼主吉太郎目線の脚本」になります。このしゃべる紙芝居は、「動物にも心があることを知ってほしい」「親と子の信頼関係について考えてほしい」「友達との絆を大切にしてほしい」「チャレンジする勇気・諦めない心を持ってほしい」という想いを多くの人たちに伝えるために立ち上げたプロジェクトです。一つの物語を違う目線で追うことで物語に込めたテーマをより強く伝えることができるのではないかと考えています。それぞれの脚本に込めたテーマを図に表しました。このプロジェクトを実現するために皆様の応援が必要です。皆様からのファンディングはもちろん、応援メッセージでも勇気をいただけます。よろしくお願いします!
ーーーーー 飼主吉太郎の脚本(一部) -----
ー シーン5 ー
俺ァタマに助けられたけど、ジッチャンはダメでした。
猟の仕方を教えてくれたり、獲物を分け合ったりと
いい仲間だったんでね、
俺はもうほとほと、がっくりしちまったんですわ。
俺が縁側でぼんやりしていると、
タマが山へ行こうと誘ってくる。
クーンクーンと、タマは赤ん坊に戻ったみたいに鳴くんです。
それを見て、俺ァ、5年前の、
タマをもらって来た時のことが思い出されました。
ー シーン6 -
タマはころんころんと転がり回る、体の良く利く犬だったが、
動くものがあると急に慎重になって、じいっと観察してるんだ。
タマがちょっと大きくなったころ山ン中で、
銃声を聞かせてみたら、平気のへいざ。
それどころか前足を上げて立ち、耳をピーンと張って、
周りの様子を伺ってるんですわ。
ジッチャンが、そんなタマを見て驚いてねぇ。
「吉太郎さん、こりゃあ、いい犬だ。
狩りの勘所がある。
あんた、育て甲斐があるねぇ」
たっぷり褒めてくれたもんだから俺ァ嬉しくて、しょうがなかった。
タマと山へ向かうたび、
一緒に歩く、その小さいがしなやかな背中が、
頼もしく思えたもンですわ。
ー シーン7 -
お前さん、猟犬ていうのはどう育てるかわかりますかね?
まず、食べ物をやるのは、家の中でも外でも俺だけ。
タマとは蒸かしたイモを、よく分けて食べました。
山でヤマドリをうまく打ち落とせたら、
まず一番にはらわたを取って、タマにやる。
ムジナの時は家族と一緒に、ムジナ汁を食べさせました。
とにかく、人と犬との信頼なんですわ。
だから猟でも、犬に危険がある獲物は追わせない。
イタチなんかは、もってのほか。
キバやツメが、犬の致命傷になるからね。
それなのに……、
タマのやつぁ、一度、イタチとやり合ったことがあるんです。
ー シーン8 -
俺はその晩、心ン底からタマに謝りました。
日が落ちて真っ暗になった玄関先で、
タマの苦しそうな鳴き声が聞こえてきた時、
俺ァ、我を忘れて飛び出しましたよ。
つやのある赤毛が汚れに汚れて、
首も腹も足も血だらけになったタマが、
大きなイタチを仕留めてきた。
今まで一度も追わせたことのないケモノなのに。
あぁ、ジッチャンのことで気に病んでいた俺を励まそうと、
タマは命を賭けたんだ……。
そう、思いました。
その晩、タマを抱いて寝て、
その傷ついた、あったけえ体から、
俺は勇気のかけらを分けてもらったんです。
(つづく)
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